台湾インディー音楽入門|Sunset RollercoasterからCollageまで注目の4組

台湾のインディーバンドと聞いて、具体的な名前が浮かぶ人は多くありません。K-POPほど日本での露出が多くないからです。ですが実態は違います。高雄のライブハウスで育ったバンドが2023年にコーチェラのステージに立ち、台北の学生バンドの曲が海外の音楽メディアで取り上げられる。台湾のシーンは静かに、しかし確実に外へ広がっています。
面白いのは言語の層の厚さです。北京語だけでなく、台湾語(閩南語)、客家語、アミ族など先住民族の言葉で歌うグループもいます。一つの島に複数の言語文化が重なり、それがそのままバンドの個性になっています。
今回は方向性の異なる4組を紹介します。ジャズとシティポップを行き来するバンド、歌詞のないインストゥルメンタルのトリオ、学生シーンから育ったロックバンド、台湾語とアミ語で歌う新世代の二人組です。
シーンを支える場所、Megaport Festival
台湾のインディーシーンを語るうえで外せないのが、2006年に始まった大港開唱(Megaport Festival)です。毎年3月、高雄港のそばで開催される屋外フェスで、台湾最大規模のインディー系フェスティバルに育っています。ここで紹介する4組のうち複数がこのフェスに出演しており、台湾語で地元文化を歌う曲がステージにかかることも珍しくありません。台湾のバンドが自分たちの言葉で何を歌うかを確認できる場所です。
Sunset Rollercoaster(落日飛車)― ジャズとシティポップを行き来する海外進出組
2009年に台北で結成され、一度活動を停止したのち2015年に再始動したバンドです。ドラム、ベース、キーボード、サックスを含む編成で、歌詞の多くを英語で書いています。音楽性はジャズやファンク、シティポップが混ざり合い、柔らかい聴き心地の奥に緻密な演奏があります。2021年には金曲奨(Golden Melody Awards)で最優秀バンド賞を受賞し、2023年にはコーチェラ・フェスティバルに出演しています。
日本のリスナー向けに例えるなら、シティポップ以降の日本のバンドが好きな人には引っかかりやすい音です。
代表曲「My Jinji」の公式MVです。90年代の香港映画を思わせる映像に乗せて、バンドの浮遊感のあるサウンドが流れます。
Elephant Gym(大象體操)― 高雄発、ボーカルのないマスロック・トリオ
2012年に高雄で結成されたトリオで、ベースとキーボードのKT Chang、ギターのTell Changの姉弟に、ドラムのChia-Chin Tuが加わった編成です。3人は高校時代に出会い、クラシックの素養を生かして複雑なリズムの曲を作り始めました。歌詞はほぼなく、ベースが主旋律を弾くインストゥルメンタルのマスロックが中心です。2014年のアルバム『Angle』で金音創作奨(Golden Indie Music Awards)のベスト・スタイル・カテゴリー賞を受賞し、2019年には同賞のベストバンド賞も獲得しています。
歌詞がない分、聴く側の想像力に委ねられる部分が大きいバンドです。日本の音楽好きなら、複雑拍子を武器にするインストバンドtoeを思い浮かべると近いかもしれません。
「公路(Highway)」の公式MVです。ベースラインが曲の骨格を作り、ギターとドラムがその上で細かく絡む様子がよくわかります。
deca joins ― 台北の学生シーンから育ったざらついたロックサウンド
2013年、台北芸術大学の学生だったメンバーによって結成されたバンドです。当初はFUBAR、続いてGray Dwarf Starと名乗り、2017年に現在のdeca joinsに改名しました。ボーカル・ギターのZheng Jingruを中心とした4人編成で、インディーロックにグランジの手触りを混ぜたサウンドが持ち味です。2018年のアルバム『Go Slow』収録曲「Wave(海浪)」のミュージックビデオは、金曲奨のベストミュージックビデオ賞にノミネートされました。
歪んだギターと投げやりな歌い方が同居し、聴きやすさより生々しさを優先している印象を受けます。日本の90年代オルタナのようなざらつきが好きな人には響くはずです。
珂拉琪 Collage ― 台湾語とアミ語で歌う新世代の二人組
2019年1月に結成された男女デュオで、客家とアミ族の血を引くボーカルの夏子・拉里又斯(Natsuko Lariyod)と、ギターの王家權(Hunter Wang)から成ります。北京語ではなく台湾語やアミ族の言葉、日本語、英語を織り交ぜて歌うのが特徴で、先住民族の音楽的要素をロックやエレクトロニックのサウンドに重ねています。2021年のデビューアルバム『MEmento・MORI』で2022年の金曲奨最優秀新人賞を受賞しました。
言葉そのものが持つ響きを大事にしているバンドで、日本でいえば沖縄の言葉とロックを結びつけてきたCoccoの立ち位置に近いところがあります。台湾語という自分たちの母語の音を、ジャンルを越えて鳴らし続けている二人組です。
よくある質問
Q. 台湾のインディーバンドは何語で歌っていることが多いですか?
バンドによって様々です。Sunset Rollercoasterのように英語中心のバンドもいれば、珂拉琪のように台湾語やアミ族の言葉を使うバンドもあり、北京語だけに限りません。
Q. まず何から聴き始めるのがおすすめですか?
歌詞のある曲ならSunset Rollercoasterの「My Jinji」、インストならElephant Gymの「公路(Highway)」が聴きやすい入口です。
まとめ
- Sunset Rollercoasterはジャズやシティポップを取り込んだサウンドで、2023年にコーチェラへ出演
- Elephant Gymは高雄発、ベースが主旋律を弾くインストゥルメンタルのマスロック・トリオ
- deca joinsは台北の学生シーンから育ち、ざらついたインディーロックを鳴らすバンド
- 珂拉琪は台湾語やアミ族の言葉で歌う二人組で、2022年に金曲奨最優秀新人賞を受賞
4組とも使う言葉も音の質感もばらばらです。まずは「My Jinji」か「Highway」のどちらか気になった方から再生してみてください。
関連アイテム
この記事に関連する本・アルバムはこちらから探せます。
※当サイトはAmazonアソシエイト・プログラムの参加者です。適格販売により収入を得ています。
