デンマーク グルントヴィークス教会とアイスランド ハットルグリムス教会に学ぶ表現主義建築

Mr.Hamaji
こんにちは!Doing ARTデザイナーのMr.Hamajiです

いつの間にか8月ですね。ヨーロッパに行っていたのもすでに1ヶ月以上前のこととなってしまいました。思い出がフレッシュなうちに、どんどん記事を追加していきたいと思います!

さて、大好きなデンマークでチェックしていた教会、グルントヴィークス。

きっかけは、ネットサーフィンしていた時に見つけた写真でした。
https://www.behance.net/gallery/59632045/COPENHAGEN-CHURCH

なんとも美しい。無駄なものが一切ない。とてもシンプルな作り。

Hamajiが持ってた教会のイメージって、宗教画で彩られた繊細かつゴージャスなステンドグラス、彫刻。実際パリやイギリスやアメリカで見た教会はそのイメージに近いものが多かったと思います。唯一、とてもシンプルだったなと感じたのはアイスランドで見たハットルグリムス教会でした。

調べていくうちにわかったのは、デンマークのグルントヴィークス教会とアイスランドのハットルグリムス教会は、「表現主義建築」という同じ様式で建てられた教会だったということ。Hamajiの頭の中のパズルがピコンと綺麗につながりました。

ということで、今回は建築のお勉強を交えながら2つの教会をご紹介したいと思います。

まずはじめに言っておくと、デンマークの教会は小さなところでもとても特徴的なフォルムのところが多かった気がします。こちらは宿泊していたホステルの近くにあった教会なのですが、カクカクした大仏ロボットに見えました。(Hamajiだけでしょうか?)

デンマークの小さな教会

 

グルントヴィークス教会(Grundtvigs Kirke)

グルントヴィークスは1800人も収容できる教会と書いていたのでかなり大きいのだろうなと想像してました。市庁舎前広場6Aのバス停からバスに乗り、20分程でBispebjergバス停にて下車します。デンマークのバスはとても乗りやすいのでバス移動がオススメです。駅だとEmdrup駅下車。徒歩で15分くらいです。目に飛び込んで来たこの景色。めっちゃ大きい、、!

デンマークの教会グルントヴィークスの正面

 

晴れていたのもありますが、、すごいなって思うのはこの計算され尽くした設計。しっかり教会が主役になるよう作られているのです。ビルや電線もないですし、周りの建物が教会を一切邪魔していません。どっしりと構えているグルントヴィークス。近くに行くとわかりますが、造りはレンガです。

デンマークの教会グルントヴィークスの正面のレンガ造り

 

この日は平日でそんなに人もいないかなと思っていたのですが、中に入るとまさかの無人。

デンマークの教会グルントヴィークスの中

 

ただただ、美しく。優しい光が差し込む本堂は、薄い黄土色のレンガがとてもよく映えます。Hamajiはこういう神様のために人間が作りあげた神聖なものを見ると泣けてきちゃうんですよね。本当、邪念を一切感じないというか。教会という場所が美しいと感じるのはそういった空気を体感してしまうからかもしれません。この写真は本堂の中央なのですが、側廊もまた美しい。

デンマークの教会グルントヴィークスの側廊

 

ほんとにシンプルですよね。この教会に使用されたレンガはなんと実に500万個以上。しかも光を綺麗に反射させるためにしっかり磨かれているそうです。確かに、普通のレンガと違ってツルツルでした。この暖かい光の秘密はこういった小さなこだわりだったのです。側廊には、このような船の模型も。

デンマークの教会グルントヴィークスの側廊の船の模型

 

こちらはデンマークの教会では伝統と言われている船の模型です。聖書では船の話がよく出てきます。「人生の荒波をキリストの操縦する船に乗って航海する」というキリスト教の信仰の象徴ともされています。船の上に見えるのは、北欧のシャンデリア。やはりとてもシンプル。

この他にある教会内のキャンドル、キリストの彫刻、入り口のドアなどあるもの全てがシンプルだったのが印象的でした。

デンマークの教会グルントヴィークスのキャンドル

デンマークの教会グルントヴィークスのキリストの彫刻

デンマークの教会グルントヴィークスのナンバープレート

デンマークの教会グルントヴィークスのドア

 

こちらは正面から見た本堂。パイプオルガンがすっぽりハマっています。薄い黄土色のレンガ、いすとパイプオルガンの茶色、パイプオルガンのシルバー。このシンプルな配色は日や時間帯によって変わる光の雰囲気をより身近に感じられますね。

デンマークの教会グルントヴィークスの正面

 

定期的にオルガンコンサートなどの音楽イベントも開催されているそうです。めちゃくちゃ行ってみたいです、、。

デンマークの教会グルントヴィークスのパイプオルガン

デンマークの教会グルントヴィークスのコンサートのポスター

教会のコンサートは無料のものも多いし、神様に捧げる音楽はとても美しく感動的なのでオススメです。是非時前にHPでスケジュールをチェックしてみてください。

Webサイト→https://www.grundtvigskirke.dk/

裏側出口から出て振り向くと、今度は反対側からのグルントヴィークス。

デンマークの教会グルントヴィークスの逆サイド

 

教会を出ると、目の前にはアパート?が。こちらもグルントヴィークスが建てられた時期に、一緒に建てられたものだそうです。同じレンガと色使いなので、まるで全て教会の一部のようですね。中心のエントランスの階段を降りて振り向くとこのような景色が飛び込んで来ます。

デンマークの教会グルントヴィークスの逆サイドにある公園から見える景色

この設計もほんとすごいですね。逆側の公園からの景色に至るまで全て計算されています。教会の屋根と、門の屋根の位置、綺麗にフィットしております。

 

建築家 P.V.イェンセン・クリント(P.V.Jensen Klint)

さて、こちらのグルントヴィークス教会はの名前はデンマークの哲学者ニコライ・フレデリク・セヴェリン・グルントヴィにちなんで名付けられました。設計者はデンマークを代表する建築家のP.V.イェンセン・クリント(P.V.Jensen Klint)。なんとコンペで優勝し、設計者の座を勝ち取ったそうです。建築が開始された当初、第一次世界大戦が勃発したため、教会の基礎工事は終戦後の1921年にやっと始まりました。1926年まで建設が行われ、さらに内装と周辺の工事は1940年まで続き着工から19年後、イェンセンの息子であるコーア・クリントによってようやく完成されました。

イェンセン・クリントという建築家は、画家としても多くの作品を残しており、建築を学び始めたのは50歳を過ぎてから。このチャレンジ精神、尊敬します。ほんと、熱意さえあれば年齢は関係ないですね。彼を調べていてあらためて思いました。

息子のコーア・クリントは、デンマークモダン家具の父と称される人物であり、インテリアが有名なデンマークでも多くの作品を残しています。

コーア・クリントの作品→http://www.republicstore-keizo.com/dmg/2016/06/27/1836/

 

表現主義建築

最初にチラッと紹介した「表現主義建築」。この表現主義とは、20世紀初頭のドイツで生まれたムーブメントのことです。それまでヨーロッパを中心に盛んだった印象派とは対極となる簡素な表現です。自然の写実的な再現よりも、表現者の内面の感情の表出を重視する芸術のスタイル。そのスタイルは美術表現のみに止まらず、映画や演劇、建築、文学、音楽などジャンルを超えて広がりました。

グルントヴィークス教会はまさにその表現主義ムーブメント真っ只中の建築物。レンガや鉄、ガラスなどの大量生産によってもたらされた新たな技術的可能性にも着想を得ているそうです。

グルントヴィークス教会のためのイェンセン・クリントの設計はさまざまな建築様式を統合して行われている。この建設計画に備えて、建築家は多くのデンマークの教会を研究した。それらの伝統的な建築様式、材料、装飾はイェンセン・クリントのデザインを奮い立たせた。イェンセン・クリントはゴシック建築の古典派垂直材に煉瓦表現主義の現代幾何学様式を組み合わせた。ビスペビャーグ墓地を通り抜けて通じる長い並木道の先に教会は建てられ対照的に置かれた隣接する建物はバロック建築に似た中軸線の景色を創り上げた。

wikipediaより

 

表現主義の様式で設計された教会はいくつかあるそうですが、実際に建てられたのはとても少ないそうです。このグルントヴィークスと、ベルリンの十字架教会、そしてアイスランドのハットルグリムス教会。

 

ハットルグリムス教会(Hallgrímskirkja)

実はHamaji、すでに2年前のアイスランド旅行の際にハットルグリムス教会訪問済みでした。

主に宿泊していたのは首都レイキャビク。このレイキャビクはとても小さい街です。この街で一番高い建物が、レイキャビクのシンボルとも言われるハットルグリムス教会なのです。

アイスランドの首都レイキャビクから見たハットルグリムス教会

 

このシンプルな外観。写真を見ていたら記憶が蘇ってきました。同じ建築様式で作られたというのが納得できます。

アイスランドの首都のレイキャビクのハットルグリムス教会の正面

アイスランドの首都のレイキャビクのハットルグリムス教会の後ろ側

 

ハットルグリムス教会はコンクリート製です。名前はアイスランドの聖職者であり詩人であるen:Hallgrimur Petrussonの名前にちなんでつけられました。レイキャビクには高い建物がないので、このようにどこにいてもこのハットルグリムス教会が目印になります。迷ったらとりあえずハットルグリムス教会集合的な感じでした。

アイスランドの首都のレイキャビクの丘の上から見たハットルグリムス教会

 

池側からも見えます。(白鳥さんの右上にちらっと見えてます)

アイスランドの首都のレイキャビクの白鳥のアビーロードとハットルグリムス教会

 

建築はアイスランドの建築家であるグジョン・サムエルソン(Guðjón Samúelsson)。着工は1945年で、完成したのはなんと41年後の1986年。彼が意図したのは「火山の国 アイスランド」を象徴的に表現した噴き上がる溶岩と言われています。本堂の中はこんな感じ。

アイスランドの首都のレイキャビクのハットルグリムス教会の本堂

 

グルントヴィークスと同じく、とてもシンプルですね。逆側からみるとこんな感じです。こちらも立派なパイプオルガンがあります。

アイスランドの首都のレイキャビクのハットルグリムス教会の本堂とパイプオルガン

 

レイキャビクで一番高い建物なので、展望台としても利用されてます(有料)。展望台からはレイキャビクのカラフルな街並みと周辺の山々が一望できます。

アイスランドの首都のレイキャビクのハットルグリムス教会の展望台から見た景色とチケット

アイスランドの首都のレイキャビクのハットルグリムス教会の展望台から見たカラフルな景色

グルントヴィークス教会に比べると小さめなので、迫力はありませんがレイキャビクのコンパクトな風景にとてもマッチしていたので、アイスランドを思い出す時必ず記憶に紐付いている印象深い教会です。レイキャビクと言えば、、!みたいな。

グルントヴィークス教会もハットルグリムス教会もまったく意識せず別々で行った教会なのですが、実はこのような深いつながりがありました。旅行もいろんなところに行っていると、小さなことがリンクしたり、ちゃんと調べてみたら実は面白い歴史があったり。世界は広いようでせまいのかもしれません。

では。