WITCHとは?ザンビア発、幻の「ザムロック」を今に鳴らす伝説バンド

歪んだファズギターと土着のリズムが渦を巻き、その上に乗るのは英語とベンバ語が入り混じったシャウト。初めてWITCHを聴いたとき、これは70年代のどこかの国で本当に鳴っていた音なのだと知って驚きました。バンド名は「We Intend To Cause Havoc(我々は大混乱を起こすつもりだ)」の頭文字。中身も名前に負けていません。
一度は歴史の中に埋もれかけたバンドです。ところが2010年代に再結成し、2020年代にはヨーロッパやアメリカをツアーで回るところまで復活しました。半世紀近い空白を挟んでなお現役でいられる理由は、実際に音を聴くとすぐにわかります。
WITCHとはどんなバンドか
WITCHは1972年、ザンビアの銅山地帯コッパーベルトの街キトウェで結成されました。中心人物はボーカルのエマニュエル・”ジャガリ”・チャンダ。1972年から1976年まで在籍し、いったんバンドを離れて教師の道に進みますが、2012年にアメリカから声がかかったことをきっかけにバンドへ復帰します。
デビュー作『Introduction』(1972年)を皮切りに、『Lazy Bones!!』(1975年)、『Lukombo Vibes』(1976年)、『WITCH』(1977年)と作品を残しました。80年代に入るとディスコやカリンドゥラ(ザンビアの伝統音楽)の要素も取り込んでいきますが、経済の悪化と政治の締め付けの中でバンドは活動を縮小していきます。
再結成後のWITCHは、ジャガリを軸にオランダ・ドイツ・スイス出身のミュージシャンが加わった国際色豊かな編成です。2019年公開のドキュメンタリー映画『We Intend To Cause Havoc』でその歩みが世界に紹介されると、2023年には実に1984年以来となる新作アルバム『Zango』を発表。2025年にはPartisan Recordsから新作『SOGOLO』をリリースし、ヨーロッパと北米をツアーで回っています。
その国の音楽的背景:ザムロックという現象
1964年の独立後、ザンビアは銅の輸出で好景気に沸きました。若者たちはラジオを通じてジミ・ヘンドリックスやクリーム、ディープ・パープルといった欧米のハードロック、サイケデリック・ロックに触れ、それを自分たちの言葉とリズムで演奏し始めます。こうして生まれたローカルなロックのムーブメントが「ザムロック」です。WITCHのほかにも、リッキー・イリロンガやアマナズといったバンドがこの時期に活動していました。
しかしザンビアの経済は70年代後半から悪化し、レコード産業も縮小。ザムロックのアルバムは長らく市場から消え、一部のレコードは現存する枚数が数えるほどというレベルの稀少盤になりました。90年代に日本のDJたちがソウルやファンクの珍しいレコードを掘り起こした「レアグルーヴ」の探求と近い動きが、2000年代以降Now-Again Recordsのような海外のレーベルによってザムロックにも起こり、WITCHの再評価につながっています。
音の特徴:どんな音がしているのか
まず耳に来るのはギターのファズの粗さです。洗練とは程遠い、割れ気味のトーンがそのまま気持ちよさになっています。ドラムはハードロックの型を踏まえつつ、どこかアフリカのポリリズム的な粘りを帯びていて、単純な8ビートに収まりきらない揺れ方をします。ボーカルは歌うというよりシャウトに近く、パンチの強さで押し切るタイプです。
イメージとしては、ブラック・サバスやディープ・パープルのような英国産ハードロックのリフを、コッパーベルトの土のリズムで再構築したような音です。音質は決して高くなく、当時の限られた機材で録音された粗さがそのまま残っていますが、その粗さこそがザムロックの魅力になっています。近年の新曲では現代的な録音環境を得て音の輪郭がはっきりした分、ファズの質感とジャガリの声の強さはそのままに、聴きやすさが増しています。
まず聴くべき曲
まずはこの2曲から聴いてみてください。
「Waile」。1984年以来38年ぶりとなる新曲で、ジャガリが1977年以来久々に新録に参加した曲でもあります。往年のファズギターの質感を保ちながら、演奏の重心はしっかり今の音になっています。
「Queenless King」。2025年作『SOGOLO』からの先行曲です。ザムロック特有の粘るリズムに、長年のツアーで鍛えられたバンドとしてのまとまりが感じられる一曲です。
よくある質問
Q. WITCHは今も活動しているバンドですか?
はい。2012年に再結成し、2023年には『Zango』、2025年には『SOGOLO』を発表しています。ボーカルのジャガリを中心に、ヨーロッパやアメリカでのツアーも行っています。
Q. 昔の音源と今の新曲、どちらから聴くのがおすすめですか?
まずは「Waile」や「Queenless King」といった近年の新曲から入ると、演奏や音質が現代的で聴きやすいです。そこから70年代の『Lazy Bones!!』などの旧作にさかのぼると、ザムロックの粗削りな質感がより楽しめます。
まとめ
- 1972年にザンビアの都市キトウェで結成された、ザムロックを代表するバンド
- 独立後の好景気を背景に生まれたザンビア産ハードロック「ザムロック」の当事者
- 2012年に再結成し、2023年『Zango』、2025年『SOGOLO』と新作を発表中
ツアーの日程やチケット情報は変わりやすいので、最新情報は必ず公式サイトや公式SNSで確認してください。半世紀近い時間を挟んでもファズギターの粗さが色あせていないところに、このバンドの底力があります。
