Khruangbin(クルアンビン)とは?テキサス発、タイ音楽に恋したインストバンド

曲を流すと、聴いた人の大半が「これはどこの国の音楽?」と聞いてきます。トレモロのかかった浮遊感のあるギター、太くうねるベース、控えめに刻むドラム。タイやアジアの音楽を想像する人も多いのですが、答えはアメリカ・テキサス州ヒューストンです。Khruangbin(クルアンビン)というインストゥルメンタル中心の3人組が鳴らしている音です。
バンド名はタイ語で「飛行機」を意味します。アメリカ生まれのバンドがタイ語を名乗り、タイのポップスから濃厚な影響を受けている。この捻れこそが、このバンドを理解する一番の入り口です。
派手な仕掛けはありません。歌詞のあるパートは少なく、ボーカルよりも楽器の絡みで聴かせるタイプです。それでも一度耳に入ると、車の運転中や夜の作業中に繰り返し流したくなる中毒性があります。
どんなバンドか
メンバーはローラ・リー・オチョア(ベース、ボーカル)、マーク・スピア(ギター、ボーカル)、ドナルド「DJ」ジョンソン(ドラム、ボーカル)の3人。2010年にヒューストンで結成されました。スピアの実家がある郊外の町バートンにある納屋で曲作りとレコーディングを重ね、ライブ活動より先に音源を仕上げていったという経緯があります。
バンド名は、当時タイ語を学んでいたローラ・リーが提案しました。数あるタイ語の単語の中で、彼女が気に入っていたのが「クルアンビン(飛行機)」だったといいます。装飾的なバンド名ではなく、自分たちの音楽的な出自を素直に表した名前です。
タイのカセットテープから始まった音楽性
このバンドの音を決定づけたのは、マーク・スピアがタイを旅した際の体験です。バンコクの露店で、1960年代から80年代にかけてのタイのポップス、モーラム(東北タイの伝統歌謡が電化されたジャンル)、ルークトゥンのカセットテープを買い集めたことがきっかけでした。タイ語が読めないまま、ジャケットの雰囲気だけを頼りに選んでいたといいます。
帰国後、スピアとローラ・リーはこれらのテープに夢中になり、ギターに深くリバーブをかけて当時の録音特有のこもった残響を再現するなど、機材面でも研究を重ねました。海外のリスナーが日本のシティポップをレコード店で掘り当てて再評価した動きと、構図としては近いものがあります。掘り出したのがタイの音楽だった、という違いです。
音の特徴、誰に刺さるか
Khruangbinの音は、フランスのバンドAirやスパイ映画のサウンドトラックが持つ気だるいムードに近いところがあります。派手なギターソロやシャウトはなく、ループするグルーヴにじわじわ引き込まれる作りです。ボーカルが入る曲でも、歌詞を聴かせるというより音色のひとつとして溶け込ませています。
歌詞をじっくり追いたい人より、BGMとして流しながら作業や運転をしたい人に向いています。ローファイ・ヒップホップのプレイリストやシティポップの再評価に馴染んできた人であれば、違和感なく入っていけるはずです。
Leon Bridgesとの共演、代表作
2019年、同じテキサス出身のシンガー、Leon Bridges(フォートワース出身)と共同制作したEP『Texas Sun』を発表。翌年には続編『Texas Moon』も発表しています。テキサスという同じ土地から出てきた二組が、それぞれ違う角度でこの土地を描いた作品です。
アルバムは2015年の『The Universe Smiles Upon You』から始まり、『Con Todo El Mundo』(2018年)、『Mordechai』(2020年)、マリのギタリストVieux Farka Touréとの共作『Ali』(2022年)、『A La Sala』(2024年)と続いています。2025年のグラミー賞では最優秀新人賞にノミネートされました。2025年11月には、デビューアルバムの10周年を記念して新たに録り直した『The Universe Smiles Upon You ii』を発表しています。
まず聴くべき曲
Khruangbinを知るなら、まずこの2曲から聴いてみてください。
「Time (You and I)」。アルバム『Mordechai』収録曲で、ディスコ的な四つ打ちのグルーヴにゆったりしたコーラスが乗ります。彼らの曲の中では珍しくボーカルの比重が高く、最初の一曲として聴きやすい構成です。
「Texas Sun」。Leon Bridgesとの共演曲で、スパニッシュ風のギターとペダルスティール、サイケデリックなトーンが交互に現れます。テキサスという土地の広さと雑多さを、そのまま音にしたような一曲です。
よくある質問
Q. Khruangbinはいつ、どこで結成されたバンドですか?
2010年にアメリカ・テキサス州ヒューストンで結成された3人組です。ローラ・リー・オチョア(ベース)、マーク・スピア(ギター)、ドナルド「DJ」ジョンソン(ドラム)で構成されています。
Q. 歌詞のある曲は少ないのですか?
インストゥルメンタル中心のバンドで、ボーカルが入る曲でも歌詞の量は控えめです。楽器の音色やグルーヴで聴かせる作りが基本になっています。
まとめ
- 2010年にテキサス州ヒューストンで結成された3人組。バンド名はタイ語で「飛行機」の意味
- マーク・スピアがタイで買い集めたモーラム・ルークトゥンのカセットテープが音楽性の出発点
- インストゥルメンタル主体のグルーヴは、Airやスパイ映画のサウンドトラックが好きな人に向いている
「Time (You and I)」を一度、部屋の明かりを落として聴いてみてください。合う人には一発でわかります。
関連アイテム
この記事に関連する本・アルバムはこちらから探せます。
※当サイトはAmazonアソシエイト・プログラムの参加者です。適格販売により収入を得ています。
