デザイナーが選ぶジャケットデザインと解説【GLIM SPANKYのアートワークとライブ編】
さて、久々にライブに行ってきました。今回はGLIM SPANKY。だいぶ前からチケット予約しておりまして、とても楽しみにしてたライブです。
正直、最近の音楽にそこまで詳しくないのですが、ラジオだけはよく聴いており、そこで知ったのがGLIM SPANKYという日本のバンド。
最初の印象としては、歌詞がめちゃくちゃ攻撃的で頭にガツンと入ってきたのと、ボーカルのレミちゃんのハスキーすぎるしゃがれ声は最初、男性が歌ってるのか女性が歌ってるのか区別がつきませんでした。その時の曲がこちら。
怒りをくれよ
こちらは2016年公開の映画『ONE PIECE FILM GOLD』の主題歌。原作者・尾田栄一郎氏からのラブコールで実現したというこの曲。ワンピースの主題歌を受けてから作った曲だからか、超攻撃的。笑 まず出だしがやばいですね。
鈍感なふりして あげるからほら調子に乗れ 最低なセリフで
もっと怒りに火を点けてくれええええええええ~
めっちゃキレるやん。笑
そっから最後まで「怒りをくれよ」ってブチかましながらどんどん敵をなぎ倒していく感じ。最高にかっこいい曲だなと思いました。
久々に女性が歌うロックでしびれました。その勢いで子供だらけの映画館に大人一人でワンピース観に行っちゃいましたよ。笑
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ということで、今回はそんなGLIM SPANKYについてご紹介したいと思います。
GLIM SPANKY(グリムスパンキー)
ロック、ブルースを基調にしながらも、新しい時代を感じさせるサウンドを鳴らす男女二人組ロックユニット。 アートや文学やファッション等、カルチャーと共にロックはあることを提示している。 ハスキーで圧倒的存在感のヴォーカルと、 ブルージーで感情豊かなギターが特徴。 ライブではサポートメンバーを加え活動中。 所属レコードレーベルはUNIVERSAL MUSIC JAPANの社内レーベルであるVirgin Records。
メンバーはボーカル&ギターの松尾レミと、ギターの亀本寛貴。二人は1歳差で同じ長野県の高校出身。高校でバンドとか組んでた人ってなんとなくイケイケなイメージがありましたが(すみません)、この二人は生徒会長(亀本さん)と副会長(レミちゃん)だったそう。
GLIM SPANKY結成はレミちゃんが高校1年生の時。元はコピバンだったそうですが、メンバーチェンジを経て最終的に4名でオリジナル曲の制作を開始。
亀本さんによると、高校に入学してきた時からすでにレミちゃんは「ギターが弾けるめちゃめちゃ歌が上手い子がいる」と噂されるレベルだったそう。
GLIM SPANKYの名前の由来はケルト文化やアイルランドの伝説にあるゴブリン(ちょっと怪しい妖精的な生き物)などが森の中を徘徊するときに辺りを照らす灯火が「GLIM」と呼ばれており、「SPANKY」は 「打つ」 「平手打ち」の意味から。
灯火という不思議な雰囲気の「GLIM」と、音楽業界に一発殴り込んでやるという攻撃的な「SPANKY」を組み合わせ、幻想的なものも歌えば、ロックで攻撃的な曲もあるというジャンルの広さを表した名前だそうです。
コンセプトがしっかりしてますね。これを高1で考えていたのか…。すごい。Hamajiは昼ごはんのことばかり考えてましたよ。ちなみにこちらがゴブリンのイメージ。
レミちゃんは結構特殊な環境で育っており、お父さんが音楽好きのレコードマニアで、幼い頃から親がセレクトした音楽が流れているような家庭だったそうです。
なので思い出の曲が渋い洋楽とかばかりでなんかかっこいい。笑
彼女は音楽の他にも、アートワーク、グッズも手がけ、衣装やメイクも自分でやることが多いそう。お母さんがイラストレーターをやっていたり、おじいさんが日本画を描いていたり、画家の親戚がいたりと音楽と共に幼い頃からアートが身近にある環境で育ち、自身も芸術大学へ進学。
ジャケットやポスターも自分でやりたいと思い、大学ではデザインを学んだそう。音楽もアートワークもほぼセルフプロデュース。米津玄師などもですが、最近はそういったアーティストが増えてきましたね。
亀本さんは90年代のJ-POPに始まり、高1でギターを初め、日本のバンドのコピーから次第に洋楽にハマるように。すばらしいギタリストであることはもちろん、彼はトークが面白いです。
芸人でもいけるんじゃないかなってくらい。笑
クールなレミちゃんとのかけあいが絶妙。そして音楽・ギター愛もすごい。Hamajiがよく観てるYoutuberのみのさんって方がやってる音楽チャンネルがあるのですが、そこにまさかの亀本さんが登場してました。笑
マニアックな熱い音楽トークを繰り広げていたので興味がある方は是非。
GLIM SPANKYのインタビューやラジオを聴いているとわかるのですが、GLIM SPANKYのお二人はミュージシャン以前にかなりの音楽マニアだと思います。
音楽詳しくなりたいけど、どこから聴けばいいかわからないって方には彼らのラジオをおすすめしたいです。古い洋楽やいろんなジャンルの音楽、ギターの話やリスナー目線、アーティスト目線の意見など、とても詳しく紹介してくれるので楽しく聴けます。
Hamajiは最初、サイケってよくわからなかったのですが2人のラジオを聴いたりミュシャ展に行ったあたりからサイケに興味が出てきました。
https://twitter.com/hamaji_mr/status/1162761442015080448
GLIM SPANKYのアートワーク
先ほども書きましたが、GLIM SPANKYのアートワークはボーカルのレミちゃん主導で作られております。彼女自身、自分でデザインができるし、芸術大学卒なので周りにクリエイターが多そう。
インタビューやラジオを聴いて確信しましたが、彼らもまた音楽は音だけじゃなくてアートワークやファッション、見た目全てをひっくるめて一つの音楽として捉えています。
これはHamajiが書いている記事で取り上げているアーティストに共通していることかもしれません。細部まで神経の行き届いた強いこだわりがあると、やはりファンになっちゃいます。
音楽もそうですがファッションなども1960~70年代カルチャーからの影響が感じられ、アートワークもその辺りの世界観をうまく取り入れて、現代版に落とし込んでいるような印象を受けます。
Bizarre Carnival (3rd Alubum)
このアルバムのビジュアルはタイトルの「Bizarre Carnival(いびつでおかしなカーニバル)」を表現した摩訶不思議な世界観と、ビビッドでサイケデリックな世界観を融合させたデザインだそうです。
こちらは特にですが、GLIM SPANKYのアートワークはカラフルでサイケデリック。そしてほとんどのアートワークに2人のビジュアルを入れて、彼ら自体も独特の世界観の一つになっています。
ジャケットデザインって、本人たちがでていないものも多いのですが、存在感をアピールするにはビジュアルを入れるって大事なんだなーとあらためて思いました。
収録されている楽曲も、これまでGLIM SPANKYが持っていたけれど見せていなかった表現の挑戦や、キャッチーな曲もあったり、優しい曲もあったり、おすすめの1枚です。
褒めろよ (1st Single)
パンチあるイラストと2人のビジュアルがマッチしているこちらは1stシングル。
こちらのジャケットはおそらくサイケの名盤Creamのdisraeli gearsのオマージュかと思います。このジャケットはHamajiも好きなジャケット。色使い、写真とイラストの融合具合とか絶妙でかっこいいですよね。
褒めろよのジャケットは色使いが和っぽくて、MVも和の雰囲気を強調してるところが面白いのです。
褒めろよ
GLIM SPANKYの2人はCreamにも影響を受けたそう。影響を受けたものをルーツに、自分たちのオリジナリティを足して新しい世界観を作る。正しいオマージュのあり方ですが、これがほんと難しいと最近思います。
すぐパクリだなんだと言われますが、歴史を振り返ると音楽やアートって、オマージュを繰り返して新しいものに進化してきたものだと個人的には思います。
ハートが冷める前に (配信限定)
こちらは配信限定曲のジャケットです。このレトロなイラストが紙に印刷されてたらなーと思ってしまう、、!
これからは配信限定という媒体がどんどん多くなって行くと思うので仕方ないですが、紙とマッチしそうなビジュアルはCDのブックレットで見たいなーと思ってしまいますね。
古い考えなのかもしれませんが、思ってしまいます。
こちらはMVもクールで、ウィルキンソンとのコラボなんですが、赤、ピンク、黒のパキッとした色使い、エフェクトと古い映像がマッチしてます。
ハートが冷める前に
レミちゃんは目がいいのですよねー。Hamajiは切れ長の目の女性にとても魅力を感じるので、アイプチとか二重手術とかで無理やり二重にするより、アジア人だけが持つ切れ長の目を生かした美をもっと讃えていただきたいと思います。最高に美しいです。
愚か者たち (3rd Single)
このジャケットは見た瞬間から好きで、こちらの記事にも書きました。
レミちゃんの正面ドアップかと思いきや、サングラスにしっかり亀本氏が写り込んでるのです。アンディーウォーホルのような、白黒写真にポイントでビビットカラーを入れてるところもいいですね。
このMVは特に好きです。顔に色やテクスチャー、骸骨などの映像を映すという手法かっこいいです。アナログにやっているのですが、すごく新しい。
愚か者たち
I Stand Alone (3rd Mini Album)
Hamajiが一番好きなジャケットはこちらです。
このジャケ写は、色合い、目線、質感、パーフェクトなんです。まず2人のスタイリング。
背景から後光が差しているような自然光と、レミちゃんの花冠、髪色、メイク、リップの色、淡いピンクの服。強いラメのメイクと、服にポイントで入ってるゴールドが効いてたり。
手前の亀本さんの民族っぽいブルーの服との相性がぴったり。彼らの好きな時代の世界観がこの一枚の写真に凝縮されてますよね。
レミちゃんの女神のようなやさしい表情は正面からのカットが大正解だし、亀本さんが横顔を見せているのもバランスがとれていていいです。2人とも正面でカメラ目線だとこんなにいい空気感は出ませんからね。
そ、し、て。このザラザラの質感!わかります?Hamajiはジャケットデザインするとき、最後に必ずこのノイズ加工を取り入れるのが密かなこだわりです。
なぜかって?ビコーズ、古いレコードジャケットの荒れた写真の質感が大好きだからです。今はファイナルファンタジーのような肌に仕上げる加工が一般的ですが、Hamajiの中では譲れないこだわりなんですよね。
おそらくですが、GLIM SPANKYにも同様のこだわりがあるような気が勝手にしてます。他のジャケットを見ても、同じような質感で仕上げているものが多いので。
構図、スタイリング、質感含め、どこか懐かしさを感じるすてきなジャケットだと思います。
このアルバムのリード曲、「美しい棘」のMVは映像もとてもレトロです。曲も優しくて切なくてすごくいい。
美しい棘
Looking For The Magic (4th Album)
最後は最新アルバムのこちら。
このジャケットのロケ地は、アメリカ・ロサンゼルスより車で3時間くらいの場所にある砂漠のオアシス・サルベーションマウンテン(Salvation Mountain)。ここは「GOD IS LOVE(神は愛)」をテーマに、芸術家のレオナード・ナイトさんが30年の年月をかけて砂漠に作ったアート作品といわれる場所です。
いたるところに「GOD IS LOVE」の文字が刻まれており、神様への愛の深さがうかがえます。世界各地にある教会や寺院などを見るたびに、人間の神様に対する信仰のパワーってすごいなーと思います。ガウディは信仰心だけでサグラダファミリアに人生を捧げたのですからね。ほんとすごい。
そんなサルベーションマウンテンは、ヒッピーたちの聖地と言われていたそう。
カラフルでインスタ映えもするので、最近では観光地として人気ですが、サルベーションマウンテンの裏地にあるホームレスたちが暮らす街、スラブシティも面白そうです。この記事に詳しく書いてあるので興味ある方は是非。
かねてからレミちゃんが行きたかった場所でもあったそうで、そこでMVとジャケットの撮影の運びになったそう。
TV show
ヒッピーの雰囲気が漂うこの土地と、青空と、2人の服の柄がぴったりマッチしてますね。フォントもぴったり。
GLIM SPANKYのライブ
7月に行ったライブで、一番驚いたのは、お客さんの年齢層がとても幅広かったこと。若い子はもちろんですが、特に目立っていたのはHamajiの両親世代のお客さん達でした。
Youtubeのコメントなどを読んでいておもしろかったのが、ビートルズなどの洋楽に憧れて音楽をやっていた世代の人達がGLIM SPANKYの音楽に出会って「俺らも当時これがやりたかった!」というコメントを残していたこと。
なるほどなーと思いました。ジャケットもそうですが、GLIM SPANKYの曲ってどこか懐かしさがあるんですよね。
大人になったら
2人の野望は「日本語の楽曲で世界に打って出ること」で、洋楽にルーツを持ちながら日本語で歌うのは自分たちの音楽を世界に発信するにあたって「日本人なので日本語で表現したい」という思いと海外の人に聞かせるには彼らに出来ないこと、つまり日本のエッセンスを打ち出していかなければいけないという考えからで、その上で世界に通用するロックサウンドやワールドワイドなリズム、現在の日本で流行しているものといったそれぞれ関係ない文脈を合体させるようにしている。
wikipediaより
こういったブレない柱があるバンドは強いなと感じます。意志の強さも、自信も、佇まいから滲み出てる気がしました。ライブも大変盛り上がり、回を重ねるたびにどんどんパワーアップしていく感じが見てとれました。
バラードもよかったし、激しい曲は頭振り乱してしまいました。笑
まだまだ若いお二人なので、これからの活躍が本当に楽しみです。
いかがでしたでしょうか?GLIM SPANKY、是非聴いてみてくださいね。
では。