デザイナーが選ぶジャケットデザインと解説【THE 810xのアートワーク2015年1月~6月(前編)】
久々のデザイナーが選ぶジャケットデザインやってきました。最後に書いたの5月のhide記事なのでもう6ヶ月ぶりですよ。さすがに間が開きすぎて反省しております。ちなみにこの記事はかなりの推し記事なので是非読んでみてください。
もう一本、ビートルズのジャケット記事を書いているのでそれは年内中にアップしますと宣言しておきます。(たぶん)
さてさて、今回は、どんなジャケット記事かというと、、弊社所属アーティストのTHE 810xです!って宣伝かよってツッコミはご容赦ください。どんなツッコミを受けようと、2014年からここまでずっとアートワークを担当してきたので、制作側のリアルな声をお届けしたい思います。先日2018年のラストシングルも発表したので、ここまでの18枚のジャケットについて3回に分けてたっぷり解説をしていきたいと思います。
THE 810x
どんなバンドかというのを私が語ってしまうと、欲目が入って胡散臭い気がするのでこちらの記事をどうぞ。他人目線からの記事ですしテンポがいいので、わかりやすいです。(タイトルはせつないけど)
今後間違いなく売れるほどハイレベルだけど、今は絶望的に知名度がない。
the 810x → https://basement-times.com/post-8601/
“CDジャケットを作りたい”っていうのがデザイナーとしての夢だったので、以前からバンドや友人のCDジャケットのデザインなどをちまちまとやってました。もちろんこれが正式な仕事になるはずもなく、趣味みたいなものだったのですが、仕事以上に楽しかったりしました。
しかし楽しい楽しいとずっと作っていられるわけじゃありません。なぜかって?→ ある程度の年齢になってくると、みんな解散しちゃったり、音楽やめてしまうから。これが現実。THE 810x以前にデザインを担当していた友人たちやバンドは、今は見事に音楽やってないです。
そうなってくると、過去の実績としてジャケットをアップされるのも断られてしまったりと、結構大変です。どんなに、よーしこれからデザインがんばるぞ!って気合い入れて臨んでも、だいたい1年くらいでフェードアウトという流れになることが多かったので、音楽の世界って本当厳しいなと思いました。デザイナー個人のやる気だけではどうにもできない世界なのです。
THE 810x結成前に、CDジャケットを担当したバンドがありました。音源がとてもよかったし、デザイン周りもすでにかっこよかったので、私の中ではかなり気合い入れてデザインに臨んだバンドでした。そのバンドが出すはずだった新曲の音源にめちゃくちゃ感動して、ジャケット作るのをとても楽しみにしていたのですが、、楽しみにしたままバンドは解散してしまいました。
さーて、また新しい音楽探さなきゃなーと思っていた時に、そのバンドのギターが新しいバンドを作るってことで、しかも楽しみにしていた新曲もその新しいバンドでやるってことで、立ち上げのデザインから参加する流れになりました。
まあざっくりですがそんな感じで2014年の夏くらいから始動しました。しかし、同時に2014年の9月?あたりから、ボーカルのアンドレがメキシコに一年間行っちゃうという遠距離活動。あれ、またこれ不穏な空気じゃない?大丈夫?と思ってましたが、彼らの熱意と、現代のインターネットの力は想像以上に強く、2015年1月から毎月ゾロ目の日に音源リリース開始することになりました。
1st single 『THE CORE』(2015年1月1日)
記念すべき2015年1月1日発売のシングルはTHE 810xのデザインをやる決め手にもなった音源、『THE CORE』
この音源を初めて聴いた時はほんと感動してしまって、私こんな音楽のデザインやれるのかと興奮したのを覚えてます。デザインコンセプトは、、
はい、このジャケット作ったの、私ではありません。ボーカルのアンドレでございます。なんでだっけ?もはや前のことすぎてあまり覚えてないのですが、この時勤務していた会社が結構な激務で12月忙しすぎて作る時間が取れず間に合わなかったとかそんな感じだったと思います。
思い入れのある曲なので悔やまれますが、このバンドのすごいとこはアンドレがアートワークやれちゃうってとこなんですよね。私がいなくても、結構かっこいいデザイン周りになるんじゃないかな。現に、このリリックビデオは全てアンドレが作ったものです。
これがリリースされて初めてジャケットとMV見た時、え、全然できてる、すご!と単純に感動したのと同時に若干悲しかったです。笑
Coreとは物事の核のことなのですが、しっかりビジュアルでコンセプトを表現できてます。
1st Mini Album『LOOP』(2015年2月2日)
1stで作れなかったため、次のLOOPには並々ならぬ気合いが入ってました。THE 810xのジャケット作る平均時間は、デモもらってからだいたい2日~1週間くらいで作るのですが、このLOOPにいたっては一番長い時間作ってた気がします。
今回は”再生を感じさせるクリアなビジュアル”にしたいっていうイメージを言われていたので、それを元にひたすら曲を聴きまくってイメージを膨らませて絵を完成させていきます。コンセプトはループなのでそのまんま、カラフルな色玉で作られた無限マーク。最初の案は、カラフルなカセットテープの色面構成だったのですが、作ってみたら微妙だねとなって現在の無限マークのデザインになりました。
無限マークも最初はいろんな形や色がありました。
最後に残ったのがこの6案。
そこから最終的に現在のものに決まりました。このアルバムの1曲目『Virtual Light Denial』の出だしがすごく爽やかで美しいハーモニーなんですが、音と絵をうまくリンクさせることができたと思います。あまり言葉では説明できませんが。収録されている曲もいろんな色があって、曲の構成もかなり考えられたアルバムです。曲の最後が曲の頭に繋がってループするのもポイントのひとつです。
2nd Single『RIGHT HERE RIGHT NOW』(2015年3月3日)
最初聴いた時、おお、ついにラップきたやんと言ってしまったこちらの曲。What’s UpというバンドのChipperさんとのコラボソングです。聴けば聴くほど耳に浸透して離れない中毒性のある曲。
Ho ! Yo!言いたくなりませんか?今までのジャケットのモチーフが、1月のCoreが円で、2月のLOOPが無限マーク、ずっと記号で来てるから今回も記号モチーフにしようと言う話になりました。最初の案がこちら。三角と、バツ。
結果、THE810xにも入ってるし、モチーフとしてかっこいいし曲にも合うからバツにしようってことで現在のものになりました。背景は写真で、全面のバツはイラストレーターで作って合成してます。私は古いレコードジャケットの写真のような粗いノイズ感がすごく好きなので、結構このノイズ加工で仕上げすることが多いのですが、本人たちは結構嫌みたいです。笑
個人的に、2015年に出したジャケットの中ではこれが一番好きです。
Cover Single『TO BE REAL』(2015年4月4日)
3ヶ月の区切りがついて、4月はTDの以前のバンド、Angry Penguin Roboのシングルのカバーをリリース。オリジナルはこちらです。
最初に書いた通り、以前はこのバンドのデザインを担当していたので、元のデータはすでにありましたが、今回はアンドレが歌うのでジャケットは変えました。変えたけど、ペンギンのシルエットは残して、1~3月の記号モチーフと同じくらいに見えるようにペンギンの顔の部分で切ってます。シルエットの中にデザインを加えて、THE810x版に生まれ変わらせたのがこちらのジャケットです。
3nd Single『Not Afraid』(2015年5月5日)
2ヶ月ぶりのオリジナルシングルということで「ちょっとイメージ変えるやつ、カラフルなやつ」とざっくりいわれました。この時ちょうど仕事をやめた直後で、NYに旅行に行ってました。NYでジャケット作ってくるわと言って、わざわざノートパソコン持ってNY行ったのですが、、まあ結果全然集中できなくて作りませんでしたよね。笑
とはいえ、1ヶ月という鬼のようなリリーススパンはあっという間にやってくるわけで、帰国してあと2日しかない状態で作ったジャケット。しかも帰りの飛行機で食物アレルギーに襲われ全身蕁麻疹と戦いながら作りました。笑 だから赤なのかも、戦った感出てますよね。
かなり切羽詰まってたのか、このジャケットに関するアイデアスケッチや別案はほとんど残ってませんでした。頭の中には最初に言われた、『カラフル』『イメージ変える』と、タイトルの『Not Afraid』のみがあったので、これもひたすら曲を聴きまくって音の色だけを頼りに作った気がします。
まず、1~3月までの記号モチーフは一旦やめて、カラフルな背景に、どっかーんと強めのタイトルを入れました。とにかく”恐れない”という鋼のような力強さを表現したかったので、もとになっている背景のイメージは東京タワーの鉄骨。
この鉄骨のイメージを元に、色を区切って肉付けしたのが、現在のジャケットの背景です。
4th Single『SO STRONG, SO LOUD』(2015年6月6日)
この曲はアンドレの曲で先に原曲を聴いていたので、THE810x版に生まれ変わった音源が送られて来た時はかなりテンション上がりました。6月の梅雨を吹き飛ばすような爽やかでスカッとする炭酸みたいな音だったので、ジャケットでもその爽快感を表現したいと思いました。
それと一度、人を使ったジャケットを作りたいと思ってたのですが、当時は自分で撮った写真かTHE810xの二人が撮った写真を使うかしか選択肢がありませんでした。この写真の女性は私の当時の英会話の先生です。(もちろん許可はとってます) すごくきれいな先生だったので、お願いして横顔の写真を送ってもらいました。
他にも別案で何人か他の女性のレンタルフォトもあったのですが、彼女に決まって良かったです。横顔を整えて切り抜いて、イラストに近くなるよう加工しながら他のいろんな素材と組み合わせてビジュアルを仕上げていきました。
頭の中にイメージはあったものの、着地までが長かったジャケットでもあります。最初顔全体が見えていたのですが、目が見えるだけでいきなり絵に性格が出てしまったりして世界観が変わってくるんだということを学びました。Hamaji論ですが、人の目線、ポーズの2つはジャケットデザインにおいてかなり重要だと思ってます。こちらが最終の6案。
ここから現在のものに決まりました。
これはジャケット良かったよと友達が連絡くれたり、周りの反応が一番大きく、自分のデザインの引き出しが増えたと感じられたジャケットでした。
以上、2015年前半編でした。これまで自分がデザインしたジャケットの内側を明かすっていうのはどうなんだろう?という思いがずっとあったので書いて来ませんでした。今年からブログを書くようになっていろんなデザイナーさんの記事を読むようになりました。
そんな中でも一番読んでて面白かったのがデザインのプロセスや、裏側の記事だったりしたので、私も自分の作品についてどんどん書いていこうという運びで今これを書いてます。こうして書き起こして掘り返してみると、やはり最初はほんと至らないことだらけだったなと思います。コンセプトも全然しっかりしていなかったし。
ただほんと、ジャケットのデザインはめちゃくちゃ楽しいです。もちろん、ああもうほんと無理、終わらないどうしようって波も何回もありましたが。笑
私が大好きなCDジャケットデザイナーの木村豊さんが、「素敵なジャケットですね!」ってツイートに対して、「ありがとう、音楽が連れて行ってくれました」って返信してたことがあったのですが、ほんとこの一言に尽きる思います。
作ってる間は音源をひたすら聴き続けるので、ほんと音頼り。1枚のジャケットを作るのに毎回再生回数は軽く500回は超えます。聴けば聴くほど新しい発見があるし、毎回デモ来る時が一番ワクワクします。私の場合、純粋に自分がいいと思う音楽のビジュアルを作れてるので、ほんとありがたいなと思います。後半もすぐアップするので是非併せて読んでいただければと思います。
では。