デザイナーが選ぶジャケットデザインと解説【THE 810xのアートワーク2015年7月~12月(後編)】

/ 11月 26, 2018/ Mr.Hamaji, アート, デザイナーへの道のり

Mr.Hamaji
こんにちは!Doing ARTデザイナーのMr.Hamajiです

今回も引き続きTHE 810xのアートワーク編(後編)です。

前半↓

自分の作品の説明を綴るのってなかなか難しいですね。はたして関係ない人が見て面白いのでしょうか?ちょっとでも参考になればうれしいです。それでは後半スタートです。(ちなみにこのあと2018年編もひかえております。笑)

5th single 『Eclipse』(2015年7月7日)

さて、2015年は毎月ゾロ目の日にリリースがやってくるというスケジュールでした。7日7日は七夕。そんな七夕の日にリリースされたのがこちらの『Eclipse』です。

the810x_Eclipse_jacket

 

月と太陽の曲。これはTHE 810xの中でも個人的にかなり好きな曲です。宇宙を感じる音とかが細部にまで聴こえてくるので是非ヘッドホンで大音量で聴いてみてください。英語だとわかりずらいと思うので和訳も貼っておきます。

Eclipse

毎晩、何百万年もの間、広い広い「無」の中に生まれた
二人の恋人はひそかに落ち合う

どんなに想っても、想い続けても届くことはない。

彼女は言う「なんで返事してくれないの?
もう永遠に無言のあなたに疲れてしまったわ。」
そんなこと言っても、彼は彼女の言葉を聞くことができないんだ。
だって彼は遥か遠くにいるんだから。

ある意味では、彼のせいだともいえないんだ。
彼だって炎と蒸気で出来たメッセージを読み取るのに疲れてしまっているから。

彼がこっちに来るたびに、
彼女は地平線の向こう側。
空を照らせないんだ。

そして二人は出会うたび
恋に落ちる。
恋に落ちる。

彼は言う「なんでもう少しいられないの?君が永遠に隠れているのに疲れてしまったよ」
そんなこと言っても、彼女にはこれ以上できることがないんだ
だってもうこんなにも苦しんだから。

約束して(僕と楽しんで)
言ってほしい(僕を自由にして)
いつも必ずチャンスはある(遠くにいたって)
この踊りは止むことがない

毎晩、何百万年もの間、広い広い「無」の中に生まれた
二人の恋人はひそかに落ち合う

どんなに想っても、想い続けても届くことはない。

彼らは言う「この恋はうまくいってない気がする」
『そんなこと分かってる。それでもなぜ、僕らはお互いのことを想い続けてしまうのだろう。』
そこにはまるで彼らが惹かれ合う強い力があるかのよう。

わたしを見て(見えないよ)
言ってほしい(それが重要なんだ)
夢見心地なんだ(遠くにいたって)

結局、解決策などはなく、そのどちらも正しくなかったということが分かるんだ

そう、彼らの愛は世界を壊してしまうから

 

音も歌詞も全体の世界観がしっかり見えていたので、ビジュアルからも月と太陽を見せたいなと思ってました。最初に出した案がこちら。

the810x_Eclipse_jacket_idea

So Strong So Loudあたりからコラージュでの表現がめちゃくちゃ楽しくて、E案あたりはだいぶそれ引きずってますね。
F案のようにそのまんま月と太陽を出してしまうと直接的すぎに見えてしまいました。届きそうで届かない儚さとか、繊細さを表現したかったので、A案に落ち着きました。そして、七夕の織姫と彦星のストーリーとシンクロさせたかったので背景には天の川を合成してます。撮影はできなかったのですが、男女のモデルで表現したい欲があったので、1年後にリリースされたMVで再現されていて嬉しかったです。

 

6th single 『Frenzy』(2015年8月8日)

THE810x始動から約1年過ぎた頃にリリースされた6thシングルのFrenzy。この曲は彼らの新しい一面を見た感じがして、ほんといろんな引き出し持ってるなと思いました。デザインと違って、曲を1曲作るっていう作業は1人ではできないし、1ヶ月という短い時間だとかなり過酷な作業だと思います。完全プライベートの時間だけで、しかもメキシコと日本という遠距離ですしね。この環境で音を作ることを楽しんでるっていうのが伝わってきた曲だったので、私も作ることをもっと楽しまなきゃと思いながら臨んだのですが、なんかこのジャケットに関しては結構もめた記憶があります。笑

the810x_Frenzy_jacket

“Struggle for balance. Dreams of the past against present expectations. Sometimes we think it’s better to drown our sorrows in ecstasy, rather than face reality.”
「バランスを取るための闘争」現在の期待に反して過去の夢現実に直面するのではなく、むしろエクスタシーで悲しみを捨てる方が良いと思うことがある。

Google翻訳より

 

難しくみえますが、快楽に身を委ねて嫌なことを忘れようとする的な歌詞だと思います。
他の案もあったのですが、このジャケットの別案に関してはレンタルフォト等を使用しているため載せられないので完成後のもののみ載せさせていただきます。

こうやって過去のジャケットを見ていて思うのは、当時の自分がどんな作り方にハマッてたかが如実に出てるってとこですね。だから説明するのも恥ずかしい。なんというか、2015年のジャケットは勢いで作ってたようなジャケットがめちゃくちゃ多いのです。5月のNot Afraid、8月のFrenzy、次の9月のTo a Frend。この三枚は特にそう。音源を聴いたままに、私の中にある抽象的なものを描きだして組み立ててレイアウト。この作業は私としてはほんと楽しいのです。曲を聴いて自分の中に生まれたものだけを吐き出してジャケットになるわけですからそりゃ楽しいですよ。

私が有名なイラストレーター、画家、アーティストだとしたなら、それで全然いいと思うのです。例えばゴッホの絵を見たTHE810xがこの曲にはゴッホの『ひまわり』のイメージがぴったりだと思ったなら、ゴッホに依頼しますよね?それはゴッホの世界観を知っている前提であって。

しかし私は、イラストレーターでもなく、画家でもアーティストでもないです。彼らからしたら、私の世界観って何?っていう話。私が表現しなければいけないものは、私の世界観じゃなくて、彼らの音楽の世界観。結局時間もなかったのでこのジャケットにはなりましたが、最後まで納得いかそうな感じでした。一番の原因っていうのは、コンセプトが見えてこなかったってことかもしれません。雰囲気と勢いで作ったものだから。当時はなんで納得してくれないのかとか、こっちも納得いかない思いがありましたが、今思うとそりゃそうだよなと思います。

もちろん、この勢い方式が合うバンドやアーティストもいます。私自身、なぜCDジャケットのデザインが好きかというと、こういった自由さが許される媒体だからというのもあります。ただTHE810xは、ジャケットやデザイン周り対しても彼らなりの考えやこだわりのラインがあって、デザインもそのラインを満たさないといけないので自分だけがやりたいことを完全に自由にやれるってわけではないです。

こんなことは言うまでもないかもしれませんが、本気で音楽をやっているバンドやアーティストのジャケットをやっていきたいと思っている人がこれを読んでいるなら、『タダでやるんだからそれでいいじゃん』とか、『プライベートなんだから好きなことやらせてほしい』とか、そういう気持ちがちょっとでもあるなら、完全に好きなことをだけをやらせてくれるアーティストを選ぶか、がっつりお金を請求して割り切ってやるかのどちらかがいいような気がします。

本気で音楽を作っている人たちが全力で作ってきたものにビジュアルという顔をつけて世に送り出す作業なので、デザイナー側にもとても責任があることです。本当に売れてほしいと思うなら中途半端な気持ちや損得感情があると、アーティスト側との関係性が悪くなってしまったり、どこかで糸が切れてしまうときがきてしまうと思います。

とまあちょっとシリアスな話にはなりましたが、これは結構大事なポイントなんじゃないかなと思ったので、嘘なく真面目に書きました。ジャケットは紆余曲折ありましたが、このMVはすごくかっこよく面白く仕上げてもらったのでとても好きです。

 

7th single 『TO A FRIEND』(2015年9月9日)

そんな壁にぶつかったFrenzyの後にリリースしたのがこちらのTo a Friend。これはアンドレの曲だったかな。ピアノの音色が美しくて、少し悲しく切ない気持ちになる曲です。歌詞の内容も、彼女を亡くしてしまった友人に向けているような歌詞でした。

8月にもめたくせに私が出した案はこちら。

the810x_toafriend_jacket_idea

 

もう完全に抽象画描くことにハマってたのかもしれません。ただこの曲に関しては結構特殊で、歌詞の内容も悲しいものだったので、はっきりビジュアル化するっていうのもどうなんだろうという気持ちもありました。結果、今回も雰囲気と勢いで自分の中にあるものを描き出しちゃったシリーズに。あまり好きじゃないとはっきり言われました。笑

the810x_toafriend_jacket

それとこの時期、一番問題だったのは意思疎通がうまく取れてなかったってことでした。THE810xのジャケットの作り方は、メールでのやりとりがメインです。2015年前半はまだ余裕もあって、デザインに関するやりとりもしっかりしながら進められてましたが、中盤くらいから彼らも曲を完成させなければいけないのでジャケットに関するやり取りは少なくなってきてはいました。

あとTDはかなりズバッと本音を言ってくるので若干見せるのが怖いってのもありました。笑 しかもわりと的を得てくるから悔しいっていう。このジャケットでもめたのも完成版をアンドレに先に送って、アンドレからのOKのみのまま、ビデオを進めてしまったことが原因でした。これは完全に私が怖気づいた結果でございます。この時はさすがに軌道修正していかなきゃまずいと思ったので、結構反省しました。考えてみれば超当たり前のことですけどね。ほんと、書くのも思い出すのも恥ずかしいです。

でもなんだかんだでこのジャケット、自分は今でも普通に気に入ってます。笑 しかし、自分一人でやってるんじゃないってことを痛感した9月だったので、自分にとって必要な経験だったんだと思います。

 

8th single 『FATE』(2015年10月10日)

2014年の9月からメキシコに行ってしまったアンドレが1年ぶりに日本に帰ってきて出した8thシングルのFATE。帰ってきたときはほんと嬉しくて感極まりました。この曲はパワーアップしたTHE 810xの勢いが溢れ出てる曲だと思います。友達が、これ聴きながらジョギングするとめっちゃ走れるねと言ってたんですが、確かにと思いました。笑

ジャケットの方も、先月までの失敗を繰り返すわけにはいかなかったので、しっかり意見を聞きながら作りました。FATEは運命や宿命という意味だから、それを感じさせるモチーフとして出てきたのがルーレットです。たしかTDの案?だった気がしますが、運命でルーレットを使うのは、ギャンブル的な匂いもしてかっこいいなと思ったのでそのまま採用しました。

the810x_fate_jacket_idea

 

最初のデモには冒頭のルーレットの音が入ってなかったのですが、ジャケットが決まった後ルーレットの音が入ってきたので、音側にも影響が加わることもあるんだなとわかり、やはりコンセプトやモチーフは、大事にしていこうと思いました。雰囲気や勢いだけじゃない、意味のある、説明できるジャケットを目指そうと思いました。

the810x_fate_jacket

 

あと、MVでルーレットがちゃんと回ってたのも嬉しかったです。

 

9th single 『BROUGHT TO LIFE』(2015年11月11日)

このシングルは、次の12月12日リリースの曲に続く2部構成の一部目。一人の女性の物語で、こちらのBrought to lifeはその女性の少女時代を描いた曲です。少女時代の希望に満ちた幸せだらけの生活が歌詞になってます。が、最後のあたりは2部への影りが見える歌詞も描かれてます。

…So much easier. She wasn’t ready, not for this nightmare, nor for the things that she was not ready to lose.
Oh! Her life was so much simpler, so much brighter, she didn’t know it, that every little happy end was only written on the books.
彼女は準備ができておらず、この悪夢のためでもなく、失う準備ができていないこともなかった。
彼女の人生ははるかに単純で、もっと明るく、彼女はそれを知らなかった、少しの幸せな終わりはすべて本にしか書かれていなかった。

Google翻訳より

 

一人の女性の物語なので、絵本のような世界観にしたいと思い、1部目は手描きを元に作ることにしました。前半のSo Strong, So Loudの説明の際に、人を使用する際は目が入るか入らないかでかなり印象が変わってくると書きました。このジャケットは人をモチーフにするので1部か2部のどちらかで目を入れたかったので、どちらにしようか迷いましたが、1部目では出さずにに少女の後ろ姿と鮮やかな明るい色で幸せな少女時代を表現しました。イメージにあったのは童謡「赤い靴」に出てくる女の子。あの曲も少女が出てくるんですが、華やかさの中にも不気味さや怖さがあって、このジャケットでも鮮やかさの中に次第に広がる毒みたいな要素も伝わればいいなと思い、黒や赤っぽい色も多めに使用してます。

the810x_brought_life_jacket_idea

 

最初の案は結構暗めでホラー要素の方が強いですね。。トリミングや、文字の入れ方も結構迷いました。

the810x_brought_life_jacket_idea_2

 

最終的に決まったのがこちらです。

10_the810x_brought_life_jacket

 

はじめにイメージした絵本からブレずに、デザインの検証もしっかりできたのでプロセスの流れとしてもよく進められたジャケットです。

 

10th single 『THE CITY』(2015年12月12日)

そしてついに12ヶ月連続リリースのラストを飾ったThe City。11月リリースのBrought to lifeの2部です。幸せな子供時代を過ごした少女は、都会に引っ越し、どんどん環境が変わっていきます。全てうまくいって家族に愛されて過ごしていた頃とは大きく変わっいく彼女の人生。。

2部構成だったため、2部では少女が成長した姿を正面から出そうっていうのだけは決めてました。それと、1部とのつながりも見せたかったので、1部で使った素材も少しづつ取り入れてます。正面を向いている女の子はとにかく目がむずかしかったです。

私自身、そこまでデッサンが得意ではないので。悲しげな目になるまで描いたり消したりばかりでした。しかし下地の女の子の目元デッサンができてからはめちゃくちゃ早かった気がします。少女時代につながる鮮やかな花や色とコラージュして、タイトルのcityとリンクしたビルの写真を合成しました。最初の時点でかなりイメージが着地していたので出したのはこの色違いの3案のみだったと思います。

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そして決まったのがこちら。

the810x_The_city_jacket

 

一番最後にして、最速で仕上がったジャケットでした。今見るともちろん、技術的にまだまだだし、今ならこうするだろうなというダメ出しはたっくさんありますが、このときの実力で出せるものは全ては出したと思います。

2015_release_all

以上、2015年の12枚のジャケットデザインでした。振り返って見ると、私の2015年の記憶ってほぼジャケットづくりで埋め尽くされてるんですよね。笑 他に何やってたかとか、あまり覚えてません。当時はほんと技術も実力もなくて、撮影もできなくて、レンタルフォト使うお金もなくて。全て1から自分で素材を作っていくしかなかったので、必死だった気がします。デザインのツッコミどころも満載で、こうすればいいじゃんとか、いくらでも文句はつけられるのですが、この1年で技術的にも、人としても成長できたとは思うので、最後まで続けられて本当によかったです。

一人でものづくりするより、誰かと一緒に作り上げていくのはやりがいがあります。もちろんその分、もめるというリスクもあるのですが、THE 810xの2人のいいところは「常識がない」ってとこだと思います。悪口ではなく、良い意味で。どんなおかしなことを言っても、全く否定しないし、どんどんやらせてくれるし引き出してくれる。よく聞く口癖が「なんで?」なのですが、これって実は大切な言葉だと思います。子供の頃は私もなんで?が口癖でしたが、大人になるにつれてだんだん空気を読んで「なんで?」が言えなくなってきたような気がします。「なんで?」という探求心は、ものづくりのキーワードになると思うのでどんどん使いましょう。話は逸れましたが、そんな感じで普通の人がいやいやそれはないでしょっていうようなことにも大真面目に挑戦するような人たちなので、こっちも自分に変なストッパーをつけずに、思ってることも嘘なくどんどん言えるので、作っていく作業がほんと楽しいんですよね。楽しいということは何よりも大切です。

次回最後は、2018年今年のTHE 810xのジャケット記事ついて書きたいと思います。

では。

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